元不動産販売の営業をしていた僕が家を買うなと言い続けた理由

家賃並みの支払いで家が買えます、家賃はお金を捨てているようなものだけど家を買えば資産になります。住宅販売業者の営業マンが使う常套句、しかし、それは全くの間違い。長期ローンというか、住宅ローンは危険が一杯。僕は大手ハウスメーカーで住宅建築の営業から住宅販売専門の仲介不動産業者、そして中古住宅を仕入れてリフォームして売るという不動産会社の営業へと渡り歩いたのだけれど、僕が知人に家を購入したいと相談をされたときには、必ず家を買うなと言ってきた。

それはなぜかというと、長期ローンで家を買うのはあまりにもリスクが大きいから。賃貸で暮らすのとはわけが違うからだ。

不動産は不動なのです

家は不動産、不動なので動かせないもの。家を買うときに欠陥住宅がどうのこうのとか、建物について聞いてくる人が多いけども、ぶっちゃけ僕の目から見たら家は建屋よりも立地が全て。家は動かせないのだから、どこに建っているかが最も大切なことなのです。立地、地型、前面道路、接道と間口が家選びでとても大切なこと。家本体、建屋のことは二の次で、好みの家を建てるなり買うなりすればいい。

一般的に家を買う人は35年のローンを組みます。途中で繰り上げ返済する人もいて、完済時期は様々に異なるでしょうが。ただ、一つだけハッキリしているのは数十年に渡って場所に縛られるということ。今の姿を見て、数十年後にどうなってるか、想像して買わなければなりません。

なので、郊外立地なんてのはもってのほか。

なぜなら、日本の人口は減ります。人は街の中心部へと集まっていきます。もし郊外のバス便しかない場所に家を買ったなら、バスは三十年後でも走っていますか!? そんな保証はありません。歳をとって免許を返納して、老人の弱った足で歩ける範囲に何がありますか。

不便だからと売りますか!?

郊外の家、具体的には、高度成長期に山を開いて作られたニュータウンの家などは、10年以上前でも簡単には売れませんでした。仕入れてから10年塩漬けとか、そんな物件もありました。そして今後、さらに人口は減り続けます。ぶっちゃけ郊外の家は出物が多すぎて売れませんよ、そう簡単には。

だから立地が大事なのです。駅前の好立地で買えないなら家を諦めたほうが良い。自動車必須、駅からバスなんて場所に家を買ってはいけない。僕はそう思います。

先の見えない時代に長期ローンを組むべきじゃない

住宅ローンの借り入れ上限金額というのは、その人の年収を元にして計算されます。いわゆる返済負担率というもので、業界では返済比率を略して返比(へんぴ)と呼ばれます。ようは、収入の中で住宅ローンを含めたすべての返済額が、所得の何パーセントになるかということなんですけれど、規定内に収まる金額までしかローンは組めません。

で、かつての昭和の時代、高度成長期というのは、それこそ倍々で所得が増えていました。多少無理してローンを組んでも、先で楽になるのが普通でした。その頃に生まれたのが夢のマイホームという考え方。結婚して子供を産んで、家を買って一人前というのが当時の理想的な中流家庭像。

しかし今は違う、デフレ経済の中で人口が減少。日本はこれから貧しくなっていきます。夢のマイホームともてはやされた時代と、まるで逆なのです。

今ならば払えるローンも、先々でどうなるか分からない時代。僕は二度も務めていた会社が潰れました。そのうちの一社は業界でも大手の会社、西日本でトップクラスの新規分譲数を誇る会社でした。関東、東北へと進出し、いよいよ本格的に全国へ……という時期に、まさかのリーマンショック。一瞬ででキャッシュがショート、あっというまの民事再生、販売に携わる営業社員はほぼ全員が解雇。

どんどん支店が増えて行き、前のめりになったイケイケの時期。まさかそんな落ちが待っているとは、誰も思っていませんでした。中でも自社の物件を購入した社員、彼らは住宅ローンを抱えて大変だったと思います。

僕が不動産業界で最後に務めていた中古住宅の仕入販売をしている不動産会社では、自社物件を売るだけでなく、任意売却物件を探して仕入れるのも仕事でした。つまりどういうことかというと、住宅ローンを払えなくなるなど、何らかの事情で家を売らなければならなくなった人から家を買い取るという仕事。

そこで住宅ローンを払えなくなった人を何人も見ました、まさに強制執行の真っ最中に出くわしたこともあります。子どもや奥さんが泣いている中で家財が持ち出され、リサイクル業者が現金化して執行官が記録して行く。相当に頑張ったのだと思います、家を守るために。家のために働く、そんな生活だったと思います。それでも守り切れなかった無念。

賃貸住宅で済んでいれば、そんな苦労をしなくても良かったはずです。昭和の時代の理想を今の時代の追いかけるのは、あまりにも無謀なのです。

奥さんと離婚しないと言い切れますか!?

僕が住宅を売っていた頃、一番大変だったのはローン審査を通す事でした。前にも言いましたけど、返済負担率というものを基準にして融資可能額が決まります。なので、いくら本人が買いたいと言ってもローンが通らなければどうにもなりません。

昭和の時代は一家の大黒柱という言葉通り、ご主人がしっかりとお金を稼いでいました。しかし自民党が男女ともに活躍できる社会を目指した結果、一人あたりのの収入が減って共働きで家計を支えるのが当たり前になりました。なので、家を買う際にも夫婦の収入を合算して世帯収入でローン申し込みするケースが増えたのです。いわゆる収入合算という方法。

そこで問題になるのが、昔と違って離婚が珍しくなくなった……ということです。

ローンの途中で離婚することになり、ローンを一人で払わねばならなくなったローンの名義人。そのまま一人で払い続けられればいいですが、そうでなければ悲惨です。売ってもローン残債分に届かない事がほとんどで、残債をどうにかしなければ土地の抵当が外せない。結果、売却ができないということになるのです。

連帯保証人になっているほうはどうでしょう、ローンの名義人が払えなければ連帯保証人に請求が来ます。自分の家でもないのに。

歳を取ると自宅が負担になる

マンション販売の時によくある話で、郊外の自宅を処分して駅前の中古マンションを買いたいという相談があります。歳をとって足も不自由になり、今の家が不便だから便利な場所に引っ越したいというのが一番の理由。

まず残債があったら一括返済できない限り無理です。また残債が無くても、家を売って頭金に……という場合、売るのに時間がかかりすぎて時期合わずということになるのがほとんど。住宅ローンは終わっていても、その後のメンテナンスでリフォームローンを組まなければならない人が多く、それなら便利なところへ引っ越そうと考える人も多いようです。足が悪くなって二階への階段をあがれなくなり掃除も出来ない、二階から傷んでしまった、修繕費が高くてていう方も居ました。

購入時で言われる家賃並みで買えるのは、あくまで金利の安い短期固定金利の場合。金利の見直しで返済額は当初よりも高くなり、繰り上げ返済をしてもリフォームローンが追加でかかって来る。固定資産税も毎年かかる上に収入減少のリスクや住環境の変化、離婚の危機まである。

更に今の時代、昔のように生活に十分な年金がもらえない、貧困老人が圧倒的に増えている。そんな中で「家賃は払い捨てだけど、家を買えば資産になる」と、購入した家が、実は資産どころか生活を圧迫する無駄なコストになるなんて話も当たり前に聞く時代。

対して、賃貸ならばその時々で最適な物件へ住み替えることが出来る。例えば、子供がいて庭付き一戸建てが良いと思えば借家。老後、安くて便利な場所に住みたければ公営住宅を選択するなど。引越し資金が無ければ貸付制度があるし、家賃も貸してもらえる。

果たして、賃貸と持ち家、どちらが今の時代に合致しているのでしょうか。

だからと言って家を買ってはいけないというわけじゃないけどね。ただ、相談されたら買わないほうが良いと答える。なぜなら、僕のアドバイスを聞いて家を買った知人に問題が起こったら、アイツが勧めたからだと恨まれてしまうじゃないですか。

よく家を買うか買わないかというと損か得かの話になるのだけれど、住まいの事なので損得で考えるべきじゃないと思う。最後ばそれぞれの判断、僕がとやかく言う事じゃないのだけど。

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