【本音】底辺から見る日本、みんなが貧しくなるとホッとする自分がいた

経済は低迷し、実質賃金も下がり続け、日本は確実に貧しくなっている。つい最近までは、そこまで酷いものと思っていなかった。けれども、いよいよ、ここ数年は、ハッキリと実感するようになってきた。「僕は貧乏だ」そりゃあ下を見ればもっと困っている人も居るだろうけども、一般に貧困といわれる層にカテゴライズされるくらいには貧しい。

そして最近、僕と同じくらい、いや、それ以下まで貧乏になる人が周りに増えている。中流と言われた、少し上の層から落ちてきた人たち。僕はそんな彼らをみて、なぜかホッとして笑顔がこぼれた。

住宅ローンが払えない

自宅を貸すことにしたんだよね。

サラリーマンから僕と同じ軽貨物の仕事に転身した男性、彼はもと不動産の営業マン。人員整理で退職を打診され、小さな会社だけに無理に残っても居ずらいだけと、退職を決意したのだという。そして僕は不動産屋で住宅販売をメインにやっていたので、同じ不動産に携わっていた人間として、ときどき言葉を交わす程度の関係になっていた。

聞くと彼は自宅を購入していて、住宅ローンが今の仕事では払えないのだと言う。一千万もしない田舎の中古マンションですらローンが通らない僕と比べれば、彼ははるかに上の生活をしていた人で、いわゆる中流という階層で暮らしてたのだろうと推測できる。

そんな彼が、僕と同じ仕事に就いて住宅ローンで苦しんでいる。郊外の宅地では家がだぶつき売ろうにも売れない。結局ローンが払えないから自宅を貸して、そのお金でローンを払い、自分たちはより安い賃貸に移ると言う。本当ならば気の毒なことなのだけど、僕は思わずホッとして笑顔が出てしまった。中層から下層へ、また一人落ちて来た……と。

貧困とは相対的なもの

僕が生まれた頃の日本、昭和四十年代末から五十年代というのは、まだ今よりも貧しい人たちが沢山いたように思う。僕の友達で家が6畳一間に4人家族、テーブルの代わりに押し入れからミカン箱を出してくるなんて漫画みたいな家が、数は少なかったけど実在していた時代。

小学校でも一年中半ズボンとTシャツなんて子供が居て、真冬の寒い中、温かいモコモコのジャンパーを着た僕たちは、冬でもTシャツを着ている彼にTシャツマンなどとあだ名をつけてらかったものだ。それもこれも、今になって思えば貧しくて服もまともに買えなかったのだろうと思う。彼はいつも何も持ってなかった。僕たちがゲームウォッチで遊んでいた時も、空気銃で遊んでいた時も。

その頃から比べると日本は遥かに豊かになって、周りの人たちの暮らし向きも良くなった。貧乏人は中流と言われる人たちの下に埋もれ、覆い隠され、顧みられることも無かった。そんな中で、僕は下層に落ちた。世の中でボーナスの話が出ても、僕には無い。旅行やレジャーの話、もう10年旅行なんて言ってない。ゴールデンウィークになれば仕事がなくなり、収入が減る。正月なんていつ休んだだろうか……親にも10年以上会ってない。そしてその都度思う、僕は貧乏でみじめな負け犬なんだと。

けども、ここ最近、貧乏な人が増えてきた。最近越してきた団地の下の階に住んでいる子供と、団地内にあるスーパーで偶然会った。お菓子を買ってやると声をかけると、お菓子はいらないからマヨネーズを買ってくれという。なんでマヨネーズなんだ!? と聞くと、お菓子は食べたらすぐに無くなるけど、マヨネーズはおかずになるし、何日も食べられると言うのだ。さらに聞くと、ご飯にマヨネーズをかけて食べると美味しいのだと、食事におかずが出る事は滅多に無くて、ゆで卵が時々ある程度なんだけど、マヨネーズをつけるとゆで卵も美味しいのだと。僕は、そう言って笑う子供の目を見て涙が出そうになった。

僕が貧乏だと言ってもそこまでじゃない、もっと良い物を買ってあげる事は出来た。しかし、ここでそんな事をしたら、彼をもっとみじめな気持ちにさせてしまうかもしれない。僕は店にあった一番大きなサイズのマヨネーズを一つ買ってあげた。

僕は貧乏だと思ってた、僕は負け犬だと思ってた、僕はみじめだと思ってた。けれども周りがどんどん貧乏になり、僕と同じような人が増えてきた。そう、周りが沈めば、自然と僕の居場所が普通になる。

だからホッとするのだ。

貧乏な人を見かける度に、そして、その頻度がここ数年で急速に増えていることに安心している。僕だけじゃない、この国は貧乏が普通になってきたのだ……と。それが少し嬉しかったりする。

卑しい、本当に卑しい、僕は性根まで貧しくなってしまった。こんなだからいつまでも貧乏をしているのだと分かっていても、それでもやっぱりいつも見上げていた上の階層から人が落ちて来るのを見ると、思わず笑みが漏れてしまう。

日本はこれからもっと貧しくなっていくんだろう。少子高齢化、特に少子化は致命的だ。人口の減少はすなわち市場の縮小。内需に頼った日本の経済、その内需がボロボロと音を立てて崩れていく。僕は今、貧困層という下層に居るけども、やがてここが中流になるのかもしれない。

みんな一緒、世の中こんなもの、借金もなく仕事があるだけでも幸せ……これで良いのだ。そして、老後は生活保護がある。

多くの人たちが今より悪くなるのだから、今よりもっと貧乏が普通になる。だからもう心配する必要も、これ以上に惨めな気持ちになる必要もない。だから僕は、下層に落ちて来る人を見る度にホッとする。僕はもう、特別じゃないんだと。

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